デンキ的まんが倶楽部

電子書籍(まんが)を売るための情報収集を日々しております。

2021年漫画家ミライ会議(大漫画時代を生き抜くヒント)の個人的な感想まとめデス。

f:id:naruton2018:20211218213426j:plain


ワタクシめもお世話になっているまんが電子書籍発行代行サービス会社、ナンバーナイン様が主催する漫画家ミライ会議というZoom視聴型リモートイベントが今月の9日と10日に開催されていまして、それについてのあくまで個人的な感想を当ブログにて描きたいと思います。(今年から画面のスクショなどが禁止されたので文章中心となりますがご了承下さい。

また一昨年開催の直接参加型イベントと去年開催されたリモートイベントについての感想はこちらに。

naruton2018.hatenablog.com

naruton2018.hatenablog.com

naruton2018.hatenablog.com

以下メニューです。

 

コロナとコミティア

最初はナンバーナイン社代表の小林琢磨氏コミティア実行委員会代表の中村公彦を招いて、現在のコミティアの現況についてのお話を聞くという内容。実際コミティアは今コロナの影響により去年からの今年にかけての参加者の減少や中止により開催存続が危機的状況になっているようでして、そのためクラウドファンディングを10月に実施し短期間で目標の金額を達成できたようです。賛同者の顔ぶれもすごい

motion-gallery.net

prtimes.jp

大手資本企業の主催でしか大きなイベントが動かせなくなってきている今のもうけ主義至上経済全盛の中で、こう言った有志による草の根的なイベントが持続できているというのは奇跡にも近い事だと思っているので、それがなくなる事はやはり何としてでも回避したいとワタクシも考えておりますし(GAFAという外資プラットフォーム企業にデジタルコンテンツの命脈を握られている現況は正直あんまり良くないと思っているので)この危機を機に我々まんがファンもこうしたアナログイベントの存続のために自分の力でできることはやったほうがいいのでないかと思いました。またそれとは別にコロナを機にダウンロード同人の販売も倍増したそうですが、かと言ってデジタル販売だけで成立するわけじゃないのが日本の同人誌世界の面白いところでして、紙の本を通した描き手と読み手を通したプロアマ問わない直接的なやりとりが今後もまんが文化を裏から支える同人文化を存続させるためにはやはり必要という事なのでしょう。

TikTok売れと漫画

TikTokにて個人で漫画紹介をして現在19万のフォロワーを持つというもつもつ氏いう方とアホガールなど様々なアニメ化作品などで知られるヒロユキ先生www.tiktok.com

このもつもつさんの紹介動画の影響で重版がかかった作品が実際何本かあり、それにより個人や出版社から自著を紹介してほしいとの献本が何冊も殺到しているそうです。

とはいえ漫画紹介動画と言っても実際当たりはずれはあるようなのですが、当たりやすいのは「もし○○が○○だったら…」という思考実験的なアイディアの作品とか、あとエロ多めの作品などだそうです。またもし漫画家自身が動画を上げるとするなら原稿を完成させていく過程などがいいようで、それで完成原稿を一番最初に見せてそれに至る過程を動画にしたほうが良いともつもつさんからヒロユキ先生へのアドバイスがありました。でも個人的にはTikTokでまんが作品自体をアップするメリットはあるのか無いのかを知りたかったんですが、それについての言及はなかったのが残念と言えば残念。

 

Twitter漫画のヒットは作れるのか?

八木戸マト先生とかめみずとら氏を招いて、ナンバーナインさまが独自に始めたプロジェクトナインというおよそ50万以上のフォロワーを持つ八木先生に、その門下生となったかめみず氏が週刊4頁あげた作品をリツイートしてもらう事で読者を獲得していこうという企画で

twitter.com

twitter.com

実際Twitterフォロワーが10万以上になってくると普通に稼げるようになる可能性は高くなるようです。とはいえフォロワーが少ないと作品を出したところで鳴かず飛ばずになってしまうというのが事実なので(-_-;)それを解消するために始めたという目的もあるようです。実際かめみず氏は3か月で3万6千フォロワーの獲得に成功しておりまして、作品をカラー化したところ更に増えやすくなったとの事。ちなみに下記にあるのが打ち合わせの段階で行われたコマ割りの添削のようす。

確かに回転ずしのごとく次々に多種多彩な作品や情報が流れてくるTwitterにおいて自分の作品をピックアップしてもらうためにはそれ相応の上手な見せ方などが必要になってくるのありましょう。しかし八木先生自身も言っておられましたがこの添削例はあくまで方法の一つで、他にも上手に進める法はあるに違いないとの事なのでTwitterに作品を上げている数多の皆さん、試行錯誤頑張りましょう。

(PS 私自身が見つけた東急ハンズ公式アカウントの中の人が描いた本をついでに)

 

漫画家と編集者の幸せな関係

お次は地動説と天動説の対立の歴史をテーマに扱ったビックコミックで連載中「チ。」地球の運動についての作者の魚豊先生とその担当編集者の千代田修平氏を招いての対談。なんでも千代田氏が魚豊先生の事を深く知るキッカケとなったのがTwitter内の過去ログで好きなバンドが偶然一緒だったことから意気投合して一気に親密になったからだったそうで、(Twitterは本来公のメディアなのにそれを忘れているのか、ドン引きするような事や後ろ暗い事を平気で書き込んでいるアカウントを散見しますが、その過去ログから誰にどんな評価を下されているかわからないって事は肝に銘じておいた方がいいと思う)確かにお二人ともうらやましいほど気が合っているようで、その漫画家と編集者の関係が良好だとまんが作品のクオリティもおのずと高まるのだなあと実感しました。

また作品については魚豊先生いわく今まで地動説を正面から扱った作品が無かったのでぜひ挑戦してみたかったアイディアだったそうです。またこの作品のテーマは「知と暴力」との事で(今ネットでよくあるエセ科学問題などが例として分かりやすいでしょうか)実際このテーマを知ってから読んだおかげでその分理解が深まってかなり得した気分になれました。この作品のワタクシの感想としましては、確かに扱ってるのが地動説という可視化するのが難しい学問のせいもあり説明についての理解力と想像力が少し要るかもしれないのと、冒頭の拷問シーンも結構きつめなので(メイドインアビスの骨折治療シーンで心折れて続きが観れなくなり、ひぐらしのなく頃にの拷問シーンで視聴をやめかけたワタクシですがなんとか1巻読破できました…)お話が進むにつれて科学歴史ドキュメンタリーみたいな感じがしてかなり面白いと感じました。歴史だけの話なら今までにもありましたがそれに科学を絡めた作品というのは確かに珍しい気がします。とりあえず給料入ったら続き買います。

あとお二人が対談中紹介していた脚本の書き方ガイド本を上げておきますね。

頑張りすぎない漫画家のあり方

次はマジで付き合う15分前Perico先生と、幸せカナコの殺し屋生活若林稔弥先生によるお二人のご自身の現在について語り合うという内容。お二人とも一般商業誌およびアプリでの活動の挫折を機に個人での執筆活動に切り替えたという経歴の持ち主で、代わりに同人や印税率の高い電子書籍出版などで活動を現在も継続なさっておられます。二人とも独自のまんが執筆スタイルをお持ちで、それを見ているうちに感じたのは今まではまんが道の時代から続いていた定期発行商業誌の連載=プロの漫画家というのが常識という時代が続いてきましたが、今の時代になってそれとは別にネットを中心としたまた別の漫画家業のあり方が生まれてきたという事ですね。ワタクシが個人で活動している漫画家として一番最初に知ったのは鈴木みそ先生だったのですが、当ブログでは何回か紹介していると思いますがこの方の著作「ナナのリテラシー」はこのテーマをダイレクトに扱っていて面白かったです。そしてこの本で知ったのですが個人の漫画家で一番注意すべきなのは訴訟リスクなのだとか(出版社の庇護にある作家は訴訟された場合出版社が協力してくれるけど、個人作家では一人で対応するしかなくなるよーで)

 

漫画家が知らない表紙デザインの世界

この回は本屋大賞を受賞した海が走るエンドロールという作品の作者のたらちねジョン先生とその担当編集者の山本氏、アートディレクターの白川(円と球)氏を招いてのまんがの雑誌内での見出しや本のカバーが完成するまでのよもやま話でした。

それで表紙デザインを作りあげていく過程について(このたらちねジョンさんは同人誌の表紙デザインや紙選びもさんに白川氏に依頼しておられるようで、同人も表紙依頼で作っていることがあるんだと知って驚きました)この「海が走る~」も雑誌掲載時には雑誌用のフォントと扉絵を独自にデザインして、単行本を作るときにはそれとは別に表紙デザイン案でも複数パターン、主人公の表情だけでも9、10パターン用意してその中から一つを吟味し選んでいるんだと知り、今更ながら本屋にある本一つ一つにこれだけの苦労がかけられてるんだなあと改めて思いました…

僭越ながらブログを続けているとサムネイル画像でも出来栄えによって実際PV数に差が出ることが分かりますし、動画サイトに旅行動画を上げている人もサムネイルのフォント文字の仕様を変えるだけでもPVが増えたと言っていたので、少し前に「人は見た目が9割」って本がありましたけど「コンテンツも見た目が9割」位の気持ちで臨むべきなのだろうなと感じましたね

韓国Webtoonの製作現場最前線

Webtoon(web+cartoonの造語かと)とは、従来型の1頁の中に複数のコマを弁当箱のように配置するのではなくて、スマホやPCのスクロール画面に合わせてコマを点在させて配置していく手法で描かれたまんがの事ですが、まんが雑誌が日本ほど一般化してないアジアではその分拡大が早くて日本でも近年ようやく広まってきた感じですが、ここでは日本初のWebtoon作品の発信を手掛けているコビンコミュニケーションズ代表花宮麻衣氏と、実際韓国発で日本国内でも人気を獲得している皇女、反逆者に烙印すという作品のプロデューサーのキム・ダヨン氏原画担当のキム・インギョン氏から制作現場の話を直接訊いてみるという内容でした。そしてその制作方法なのですが、日本のように漫画家×アシスタントの内職的な方法ではなくて一つのスタジオの中で構図を考える、絵を描く、色を塗るなど専門の人が配置されていて完全に分業化されている手法をとっているようです。日本でまんが執筆作業の分業というとさいとうプロを連想しますが、小説の原作を元に作ってたり複数の作品を引き受けたりしていると知って、アニメ制作スタジオと同じような感じなんだろうなと思いました。ここから先は個人的な想像ですがこれからの作家の有り方は個人で執筆して描いていく作家性の強いタイプとこうした分業の中で力を発揮していくタイプに二分化されていくんではないかと思ったりもしましたね。

超創作論

最後は「はじめの一歩」でおなじみの森川ジョージ先生ワンパンマンの作画を担当なさっている村田雄介先生による超創作論と銘打った公開直接対談。お二人ともお互いの作品と人格を尊重しつつおもんばかりながら、お二人が普段どのような考えを持って漫画家を続けているのか色々分かって面白かったです。(森川先生の描いたサイタマと村田先生の描いた一歩というレアイラストも拝めて眼福でした)1時間弱の間話は多岐に及んでいましたが、その中で印象に残ったのがお二人の作品に共通している部分の一つ、パンチの描き方ですかね。まんがなどではよく見る半身を後ろに引いてデカいモーションから拳を出してくるポーズ、確かに絵的には迫力はあるものの森川先生いわくあれは隙が有りすぎて実際には使えないの話。現実には正面からすぐに放つストレートの方が大きな威力が期待できるとの事で、しかも手首と拳の位置がちゃんとしてないと当たった際に打った方の手も損傷を受けるんだそうです。恥ずかしながらパンチのポーズについてなんて今まで全然ちゃんと考えずに描いていたので非常に勉強になりました。それにマンガの中でのリアリティを追求する事の大事さも(猛省…)もう一つはお二人とも未だに自分の絵に自信がないんだそうで、自分の絵は常に下手だと思ってるんだとか…観てる方からすれば「えーっ」て感じもしましたけど、トッププロもそういう気持ちで描いているんだから我々も下手であることを嘆いてそれを理由にやめちゃいけないって事なんではないでしょうか…?

 

以上がこの二日間にわたるミライ会議についての個人的感想になります。今のところそう大して稼ぎを挙げられていないよーな木っ端漫画家(?)のワタクシもこの先頑張らなきゃいけないんだなと尻を叩かれた(火をつけられた?)気持ちになりました。このイベントのテーマはあくまで漫画家の皆さん中心の話ではありましたが、ネットを通して誰でも情報発信と同好の士と交流が可能になっている今の時代、どんな業種の仕事をしている人でもこのテーマはある程度当てはまる普遍的なものなんじゃないかとも感じております。戦後からずっと続いてきた個人のライフスタイルが大きく変貌していくであろうこれからの時代、どう生きるべきか…

 

現在前半四テーマの動画のアーカイブ化がしたものがここでも見られるようになったようです。

www.youtube.com