アニメ「どろろ」を原作と比較してみた
アニメ版どろろ最終回観終わりました。自分の身体をすべて取り戻した息子百鬼丸と
対照的に細君も次男も地位もすべて失った父、その立場の逆転は本当の意味でのハッピーエンドと言ってよいものか、そもそも百鬼丸も道中色んな人の様々なものを奪っている…このまま人の道に背かずに今後の戦国時代を生きていけるのか…その答えは観る人に委ねられたって事なんでしょうか…
個人的には母ちゃんは自分を犠牲にしてでも多宝丸は何とかして生かしていく方にもっていってほしかった気もする…というか死体の描写がないので実質生死不明とも言えなくはないかも知れないけど。
僭越ながら思いついたしょうもない自家製2コマまんがです ・・・
それでアニメ終了したのをキッカケにキンドルで原作全四巻買って読みました。
どろろ自体は手塚作品の中では「火の鳥」「ブラックジャック」などに比べると一般的には少しマイナーな感じもします・・・が例えば「ハガレン」なんてどろろの子供の一人みたいなもんだと思いますし、人間誰もが持つ一番の財産、身体を取り戻す戦いっていうアイディアが後世の作家に与えたインパクトはかなりデカいんではないかと。
●アニメ版を引き立たせた最大の設定とは
さて今回のアニメ版、やっぱり一番効いていたのは百鬼丸が体を取り戻す代わりに、醍醐の国が傾いていくっていう設定だと思います。
原作では鬼神を倒すと身体は戻ってきますが、国の方がどうなるとか言った描写は表には出てきません。百鬼丸が行く先々で村で鬼神を倒しても村人から最後には嫌われて放逐されるというのは出てきますけど、国全体に悪影響が出るというのは物語の中では大きな扱いにはなっていませんでした。
●百鬼丸の性格が全然違う
アニメ版では最初は口がないのでずっと無言だったのに対し、原作ではテレパシー的なもんを使って？ いきなりよく会話してます（この辺が時代劇の割にSFくさいというか）あと自分の力の使い方を心得ているのでどろろに頼らずスタンドプレーで突っ走っていきます。戦闘が強い以外は何考えてるかよくわからない天然キャラだったアニメとはだいぶ違うんで多分アニメから原作入った人はかなり戸惑うかもしれないですね
●アニメでは多宝丸が最大のライバルに
原作の多宝丸はアニメとは違いばんもんの巻で国境の村人の助六たちを射殺させたりと割と冷血漢で、結局そのばんもんで百鬼丸と真剣勝負で殺されて出番が終わっています。
アニメではそこで死ななかった分、百鬼丸のライバルとして最後の最後まで君臨したという事で、ある意味もう一人の主役としての役目を果たせたのではないかとも。
多宝丸はばんもんの巻で決闘の末命を落とす
●どろろの冒険の動機が全く違う
アニメ版では冒頭では盗品を売りさばいていたどろろですが、百鬼丸とペアを組んでからは化け物退治のプロデューサーかマネージャーみたいな感じになってました（笑
その点原作では「百鬼丸の刀が欲しくてついて行ってる」って本人は言ってます。アニメ版では「武士も刀も嫌い」と言っていたのでそこは動機が全く逆ですし、また原作ではたびたび泥棒稼業を再開したりもしてます。
それから百鬼丸の行為が国を傾かせているっていう事がどろろの気持ちにも動揺を与えていて、そこが原作にはない二人の距離感を作っている所もありましたね。あと保護者的な目線があるのもやっぱり脚本が女性だからかも？
●化け物の登場表現は原作の方が凄い
アニメ版では鬼神は怪獣というかモンスター的な感じの存在でしたが、これに関しては原作、手塚作品のまんが表現力の凄さというかアイディアが冴え渡りまくってるんではないかと。この世ならざるモノ達の存在を表現しきってる感じがしました。
透明人間が履いているみたいに草履だけが歩いてくる…それを斬るとなんと草履から血しぶきが…！
家の外から除く不気味すぎる目
しかし入ってきたのは美少女…
●このほかに原作にもアニメにも戦災や飢饉で苦しむ描写がありますが、これに関しては実際の戦争と戦後すぐ本当に食糧がなかった時代を直に体験している手塚治虫自身の描いた原作の方が、リアリティーはやっぱり出てる気がしました。
あと原作の、百鬼丸が体を作ってもらうくだり。ピノコとかを連想しますな
